【中級】Percy Jackson and the Titan’s Curse

デミゴッド(ギリシャ神話の神と人間のハーフ)のパーシーは、仲間のアナベス、タリアと共に、ある学校へ潜入する。そこには同じくデミゴッドの姉弟がおり、2人をモンスターから救出することが3人に課せられたミッションだった。しかし、パーシーたちは、ライオンの胴体と人の頭をもつ怪物マンティコアとの戦いに苦戦。女神アルテミスのハンターたちに危ないところを助けられたものの、マンティコアはアナベスを連れて逃げ去ってしまう。

一方、かつての友人で今は敵となってしまったルークは、オリンパスを崩壊させ、かつて宇宙を支配した神クロノスを復活させるための計画を着々と進めていた。ルークたちの罠に落ち、囚われてしまったアナベスとアルテミス。2人を救うため、ハンターとデミゴットたちは西に向かう。「冒険に出た5人のうち、1人は道に迷い、1人は死ぬだろう」という不吉な予言とともに…。

恋愛や家族、人間関係の苦しみ

ギリシャの神々が、どんな姿で登場するのかは、このシリーズの楽しみの1つ。今回は、双子の兄妹アポロとアルテミスが登場。特に重要な役割を担っているのが、狩猟の女神であり、純潔を尊ぶ処女神でもあるアルテミス。子供はいない代わりに、自身に忠誠を誓った未婚の女性(ハンター)たちを引き連れている。

好きな人に失望させられたり、信頼していた人に裏切られたり。恋愛は、苦しみを伴うものでもある。恋愛なんてしなければ、そうした苦しみを味わうこともない。あるいは、時に負担に感じるような家族との絆も、ハンターになれば断ち切ることができる。

アナベスとタリアは思春期にあり、未婚の道を選ぶのか、少女から女性への成長を受け入れるのかという選択に揺れる。2人だけでなく、本作ではビアンカという神と人間のハーフも登場し、彼女の決断も物語の展開に大きな影響を与えることになる。

さて、そんなアルテミスの処女性と正反対な立場にいるのが、美と愛の女神アプロディテ。潔癖なアルテミスと、自分の美しさと恋愛にしか関心のないアプロディテ。パーシーが、アプロディテにある種の恐怖を感じたのは、これから先、大人になる過程で通るであろう恋愛の苦しみを予感してのものだろうか。

推定15歳

3作目となるパーシー・ジャクソンシリーズ。ギリシャ神話に基づいた壮大な冒険物語だということを差し引いても、今作は「ちょっとそれはどうなの?」と言いたくなる場面が多かったような。

例えば、「ギリシャの神たちの中で『Big 3』と呼ばれる、ゼウス、ポセイドン、ハデスの子どもが16歳になる時、オリンパスの命運を決定づける存在になる」という予言。この予言の子どもが一体誰なのか?というのはシリーズを通した大きな問い。…なのだけど、その候補の1人であるタリアは、12歳の時に仲間を守るために倒れ、気の毒に思った神ゼウスによって松の木に姿を変えられている。前作で人間として蘇ったものの、松の木になっていた間は年の進みが遅くなっていたようで、現在何歳なのか明確でない。物語上は、見た目から現在15歳と推定されているものの、予言と関わってくる大事な年齢が「推定」とは、いくらなんでも無理がある。

タリアの年齢だけでなく、「神は人間やデミゴッドたちの問題に直接的に介入しない」という原則があったはずなのに、それが無視されている場面があったり、アナベスのお父さんが子供たちの救出に登場したりと、今作は少々設定に気になるところがあった。とはいえ、なんだかんだ物語が破綻していないのは、さすがに人気作者の腕というというべきか。

日本生まれ、日本育ち。本が大好き。 特にミステリー、冒険もの、歴史もの。 海外駐在員。 TOEIC 950、IELTS Academic 7.0

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