【初級】Matilda

マチルダは4歳の女の子。中古車販売会社を経営するお父さん、ビンゴとテレビのメロドラマが大好きなお母さん、そして平凡なお兄ちゃんと一緒に暮らしている。

マチルダは、1歳半で大人並みに話せるようになり、3歳になる頃には新聞や雑誌が読めるようになった天才。しかし、両親はそんなマチルダに無関心。「本を買ってほしい」とお願いするマチルダに、「テレビがあるのに本を読みたいなんて、なんて甘ったれなんだ!」と言い放つお父さん。仕方なくマチルダは、町の図書館に通うことに。そこでマチルダはたくさんの本を読み、様々なことを学び、想像力を育んでいく。そしてその想像力を使ってマチルダは、自分を侮辱するお父さんや、いじわるな大人への仕返しを開始する…!

理不尽な大人との戦い

この本の一番のテーマは、子供と理不尽な大人との戦い。
子供は力では大人に敵わない。そこでマチルダは、大人に理不尽なことをされた時は、頭を使って「仕返し」することを決める。

She seems to know that neither crying nor sulking ever got anyone anywhere. The only sensible thing to do when you are attacked is, as Napoleon once said, to counter-attack.

そのおかげで、お父さんは様々な悲劇に見舞われるのだが、マチルダがどんな仕返しをしたのかは、実際に本を読んでみてほしい。

そんなマチルダが学校に入ると、今度は校長先生が巨大な敵として立ちはだかる。生徒も、他の先生たちも逆らえない、大きくて凶暴な校長先生。そして、小さく弱いマチルダ。しかし、

We may be small but we’re quite tough.

という、マチルダの友達ラベンダーの言葉通り、マチルダは校長先生をも打ち負かしてしまう。さらに示唆的なのは、マチルダはこの時、自分のためではなく、自分の大好きな先生を救うために知恵を働かせる。

大人は自分が大人だというだけで、いばったり、子供を自分の思い通りにしようとする。そんな理不尽に立ち向かうマチルダは、子供たちの(そして昔、理不尽によって傷つけられた大人たちの)ヒーローなのだ。

マチルダによる作家評

本好きのマチルダ。子供向けの本を一通り読み終えた後、一番のお気に入りに挙げたのは「秘密の花園」。その後も、ディケンズの「大いなる遺産」や、シャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」、ジェイン・オースティンの「高慢と偏見」、ヘミングウェイの「老人と海」などを次々と読破していく。これらマチルダの読んだ本たちは、さながらロアルド・ダールによる子供たちへのリーディング・リスト(推薦書)のよう。

そして、本の中では、マチルダがこれらの本について感想を述べる場面がいくつかあるのだけれど、それはダールがマチルダの口を借りて作家の論評をしているようにもみえる。

例えばヘミングウェイについては、

Mr Hemingway says a lot of things I don’t understand,(中略)
Especially about men and women. But I loved it all the same. The way he tells it I feel I am right there on the spot watching it all happen.

また「ナルニア国物語」などを書いた C・S・ルイスについては、

I think Mr C. S. Lewis is a very good writer. But he has one failing. There are no funny bits in his books.

マチルダに言わせると、「子供は大人みたいに深刻じゃないし、笑うのが大好きなんだから、おかしな部分 (funny bit) が子供の本には含まれてないと!」とのこと。

この本には、ロナルド・ダールの、本に対する愛があふれている。ここに挙げた本だけでなく、他にもたくさんの本が引用されているので、興味が湧いた本を読んでみるのもいいかもしれない(それがダールの思惑だったりして…)。

If only they would read a little Dickens or Kipling they would soon discover there was more to life than cheating people and watching television.

「良い本を読めば、人生には、人を騙してお金を儲けたり、テレビを観るより、よっぽど大切なことがあることがわかる。」これこそが、ロアルド・ダールの言いたかったことだろうから。

日本生まれ、日本育ち。本が大好き。 特にミステリー、冒険もの、歴史もの。 海外駐在員。 TOEIC 950、IELTS Academic 7.0

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