【中級】Percy Jackson and the Lightning Thief

パーシー・ジャクソンはニューヨークに住む12歳。学校で問題を起こしては、何度も退学処分を受けている問題児。今年こそは無事に1年を終えられるよう、おとなしくしていようと決意したのも束の間、校外学習で訪れたメトロポリタン美術館で、再び問題を起こしてしまう。実は、パーシーはギリシャ神話の神と人間の間に生まれたハーフ。人間世界にいると怪物たちに狙われ、その度に、人間の目にはパーシーが問題を起こしているように見えていたのだった。

自分が神とのハーフであることを知ったパーシーは、ハーフのための施設「Camp Half-Blood」へと向かう。仲間達と訓練を受け、少しずつキャンプでの生活に慣れていくパーシーだったが、ある日、オリンパスの最高神ゼウスの武器「雷撃」が何者かに盗まれたことを知る。神々はお互いに不信感を募らせ、人間をも巻き込んだ大きな戦争が間近に迫っていた。戦争をくいとめるため、パーシーは親友のグローバー、アナベスとともに、ゼウスの「雷撃」を探す冒険へと旅立つ。

現代に蘇ったギリシャ神話

人々に忘れ去られたかにみえたオリンパスの神々。しかし、彼らは何千年と変わらず、西洋文明の中心にいた。「西洋文明の中心」、すなわち今はアメリカ合衆国にいる…という突拍子もない設定。なのだけど、神々の姿が生き生きと描写されていて、「もし現代社会に彼らが現れたら、こんな風かも」と思わせる面白さ。

本作で重要な役割を担っているのが、戦争の神アレスと冥界の神ハデス。アレスは、黒いレザージャケットを着て、巨大なバイクで登場。ハンサムだけど、どこかいじわるそうで、相手を挑発する雰囲気をもっている(とはいえ、これはあくまで人間たちに見せる仮の姿)。一方、冥界の神ハデスは、急速に増え続ける人間の死者に頭を悩ませていた。「この1世紀、どれだけ死者のための区画を増やしたと思っているんだ。その分、警備員も必要になるし、交通渋滞も増えるし、職員の残業も2倍になるし、とんでもない支出だ!」とぼやく姿は、とても人間臭い。

他にも、アテナとポセイドンのライバル関係、アレスとアフロディアの不倫、人を石化してしまう「メドューサ」(頭がヘビの怪物)の話など、どこかで聞いたことがある話がたくさん出てきて、ギリシャ神話に詳しくなくても楽しめる。そして、もっとギリシャ神話を知りたいと思わせてくれる。

複雑な親子関係

ギリシャ神話といえば、親子や兄弟間で殺し合いをしたり、結婚したりと、家系図的にも倫理的にも複雑で、とんでもない家族関係で有名。その上、神々は、人間や他の生き物とも簡単に恋愛し、子供を作るのだから、混乱が起きないわけがない。

パーシーをはじめ、多くのハーフ(ヒーローとも呼ばれる)たちも、親との関係に傷つき、悩んでいる。

The gods are busy. They have a lot of kids and they don’t always… Well, sometimes they don’t care about us, Percy. They ignore us.

とは、アナベスの弁。パーシーと冒険を共にするアナベスは、母親がギリシャ神話の神アテナ。しかし、人間のお父さんが再婚したことで、家族の中で孤立し、キャンプが唯一の居場所となっている。

パーシー自身は、人間の母親とは仲が良いものの、母親の再婚相手である継父とは、母を巡ってライバルのような関係にある(この辺は、マザー・コンプレックスが示唆されている)。そして、死んだと思っていた父親が、実はギリシャ神話の神だったという事実は、他のヒーローたちと同じように、パーシーを悩ませることになる。

さて、今後の物語に、これらの親子関係がどう関係していくのか。ヒーローと神々が交錯する冒険は、まだまだこれから。

日本生まれ、日本育ち。本が大好き。 特にミステリー、冒険もの、歴史もの。 海外駐在員。 TOEIC 950、IELTS Academic 7.0

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