魔法学校ホグワーツに通うハリー・ポッター。夏休みになり、叔父と叔母の家に戻ってきたハリーは、憂鬱な日々を過ごしていた。魔法の道具を取り上げられ、誕生日も祝ってもらえず、1人部屋にこもっていたハリー。そんな彼のもとに、お屋敷エルフのドビーが現れる。ドビーはハリーに、「ホグワーツに戻ってはいけない。戻れば、死の危険が待っている」と警告に来たのだった。しかし、マグル(魔法の力をもたない人間)の世界に居場所のないハリーは、新学期の始まりとともに、ホグワーツへ戻ってしまう。
そしてホグワーツでは、ドビーの言葉通り、恐ろしい事件が起きる。学校の創設者の1人であるサラザール・スリザリンが作った「秘密の部屋」が開けられ、そこに棲みついていた怪物が解き放たれたのだ。ホグワーツの生徒たちが次々と倒れ、その魔の手は、ハリーの親友ハーマイオニーや、ロンの妹ジニーにも襲いかかる。
「秘密の部屋を開いたのは誰なのか?」「怪物とは、一体何なのか?」
ハリーは謎を追い、ホグワーツを守るため、秘密の部屋へ乗り込む!
ロックハート先生
魅力的なキャラクターがたくさん登場するハリー・ポッターシリーズ。その中でも、強烈な個性を放っているのが、ギルデロイ・ロックハート先生。目立ちたがり屋でナルシスト。魔法のスキルはからっきしだけど、口だけは達者。そして、ハンサムな顔とチャーミングな笑顔で、女性たちを虜にしてしまう。
そんな自分大好きロックハート先生、自分以外の誰かが注目を浴びるのは許せない様子。他の生徒に写真をせまがれているハリーを見るや、
Let me just say that handing out signed pictures at this stage of your career isn’t sensible – looks a tad big-headed, Harry, to be frank.
「まだ君には早いんじゃないかな」と、やんわり牽制。そんな気もないハリーをうんざりさせている。
それにしても、能力はないのに自信満々、メンタルが強いところは、ロックハート先生のすごいところ。根暗で陰険なスネイプ先生を、決闘クラブの「アシスタント」として使い、返り討ちにあっても決してめげない。バレンタインには生徒たちに、
Why not ask Professor Snape to show you how to whip up a Love Potion!
「スネイプ先生に、Love Potion(惚れ薬)の作り方を教えてもらったらどうだろう!」と朗らかに呼びかけ、スネイプ先生の静かなる怒りを買っている。とにかく空気の読めないロックハート先生。ダメ人間だけど、面白すぎて、どうにも憎めない。
純血主義とスリザリンの継承者
ホグワーツの言い伝えによると、秘密の部屋を開けられるのは、スリザリンの継承者のみ。そして、「スリザリンその人と同じく蛇語が話せるハリーこそ、その継承者なのでは…」という噂が学校中を駆け巡る。
実際、スリザリンの子孫であるトム・リドル(ことヴォルデモート)も、ハリーと自分には重要な共通点があることを指摘している。純血ではないこと、マグルに育てられた孤児であること、蛇語が喋れること。その上、見た目もどこか似ているとまで言っている。
これに対してダンブルドア校長は、ハリー自身がスリザリンではなくグリフィンドールを選択したことこそ、2人の決定的な違いだと話すのだけれど…。「スリザリンではなくグリフィンドールを選択する」というのは、一体何を意味しているのだろう?
ホグワーツを創設した4人のうち、唯一「純血主義」を唱え、秘密の部屋を残してホグワーツを去ったサラザール・スリザリン。そして、その秘密の部屋は、「純血」でない生徒を暴力を使ってでも排除しようとするものだった。
…ということを考えると、ハリーがスリザリンではなく、グリフィンドールを選んだということは、彼が、純血主義や、それに伴う優越主義や差別を拒否したとも読める。公平で寛大なダンブルドア校長からすれば、これこそが、ヴォルデモートとの「決定的な違い」だと伝えたかったのだろうか。