「マチルダ」や「チャーリーとチョコレート工場」などの作品で有名な、ロアルド・ダールの児童書の1冊。
誰もが寝静まった真夜中。Witching hour とも呼ばれるこの時間は、怪しい生き物たちが外に出てくる時間。孤児院で生活するソフィーは夜になっても寝付けず、ふと気になってカーテンの隙間から窓の外を覗いてしまう。すると、なんとそこには巨人が!巨人に見つかり、捕らえられたソフィーは、巨人の国に連れ去られてしまう。
そんな巨人たちの好物は人間。ソフィーも食べられてしまうことを覚悟するが、ソフィーを連れ去った巨人は、巨人の中で唯一、人間を食べない巨人、ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(BFG)だった。巨人の社会と人間社会の違いにとまどいながらも、ソフィーとBFGは友情を育んでいく。
そんな中、巨人たちがイギリスの子どもたちを食べに行くと聞いたソフィー。子どもたちを巨人の手から救うべく、BFGとある計画を立てる。イギリス女王も巻き込んだ、2人の「打倒巨人作戦」は果たしてうまくいくのか!?
巨人の言葉遊び
巨人の社会には学校もなく、親もいない。
教育を受けていないので、彼らのしゃべる英語は間違いだらけ。
例えば、human being (人間)は、巨人にかかれば human bean に。巨人にとって人間は食料なので、「人間豆」もあながち間違いではないのだけど…。
他にも、巨人が「ソフィーを連れ去ったのは自分だ」という時には、
I is the one who kidsnatched you.
となる。もちろん、kidsnatch は kidnap の言い間違え。でも、kid (子供)をsnatch(捕まえる)とは、うまい造語。ちなみに、巨人の文法では be 動詞は「is」しかなくて、「I is」「You is」「They is」と言っている。
そんな巨人のめちゃくちゃな英語は、英語学習者には、ちょっと難しい。知らない単語が出てくる度に、「これは造語なのか、それとも単に自分が知らないだけなのか?」と、気になってしまう。でも途中で、「そんな風に神経質になるのは損だ」と開き直って読み進めることにした。
なんせ、本に出てくるイギリスの軍人も、BFGに
I can’t understand a word this feller says,
「こいつの言うことはよくわからん!」と言ってるくらいなのだから。巨人のおしゃべりは、「変な英語!」と楽しむくらいの気持ちで読むのが正解のよう。
ところで、最初こそ巨人の英語に困惑していたソフィーだけれど、いつの間にかBFGの言うことがすっかり理解できるように。ソフィーが子供で、柔軟な頭をもっているからなのか、一緒に時間を過ごして友だちになったからなのか、あるいはその両方なのか。
The Queen
作品に登場するイギリス女王。
もちろんこれは、今年、在位70年を迎えたエリザベス女王のこと。
6月にはプラチナ・ジュビリーと呼ばれる記念式典も開催されて、イギリス中がお祝いモードだったのをテレビで観た人も多いかもしれない。式典では、エリザベス女王が、くまのパディントンと共演した動画も公開されて、そこにはパディントンと楽しそうにお茶する女王の姿が。そういえば、ロンドンオリンピックでは、ジェームズ・ボンド(を演じたダニエル・クレイグ)とも共演していたし、エリザベス女王は、イギリス屈指のエンターテイナーかもしれない。
さて、このお話の中でも、重要な役割を担っている女王。女王が、巨人やソフィーとどんな風に関わっていくのか。また、バッキンガム宮殿で働く人々の奮闘の様子も、物語の読みどころの1つ。