「Spy School」シリーズの第2巻。
ベン・リプリーは、CIAスパイ養成学校の1年生。学期末のテストも終わり、家族や親友と楽しい夏休みを過ごそうと計画していた矢先、校長先生から呼び出され、強制夏合宿(スパイ・キャンプ)への参加を申し渡される。その上、悪の組織スパイダーからは脅迫状が届き、楽しいはずの夏休みに暗雲が垂れ込める。
ベンがクラスメートと向かった合宿先は、文明社会から遠く離れた森の中。サバイバルの達人ウッドチャック先生の下、野外訓練を行う予定だったスパイ学校の生徒たち。しかし、安全と思われたキャンプ場にもスパイダーの魔の手が…。野外訓練は、いつしかリアルなサバイバルゲームとなり、ベンは、敵の手を逃れながら、スパイダーの企みを挫くためのミッションに取り組むことに。
前作では、スパイ学校の優等生、エリカと2人でスパイダーの陰謀を暴いたベン。今作では、エリカだけでなく、他のスパイ学校の仲間や、エリカの家族もミッションに参加。一丸となって敵の組織に立ち向かう。
優秀なスパイとぽんこつスパイ
まだ学生なのに、すでに本物のスパイ並みの能力を備えているエリカ。そして、そのスキルや知識のほとんどは、CIAの伝説的スパイである祖父サイラスから教わったもの。優秀なエリカは、サイラスにとって自慢の孫。そして2人は、エリートスパイ同士、特別な絆で結ばれている模様。
She and her grandfather shared a smile, indicating they were on the same wave-length.
一方、父のアレキサンダーは、エリートスパイを演じているものの、実際には人の手柄を横取してきただけの、ぽんこつスパイ。へまばかりのアレキサンダーに、娘のエリカは、
Do something useful for once, Dad.
Is there anything you can’t screw up?
と、辛辣な言葉を投げつける。
娘にも尊敬されず、父親にも認めてもらえず、
I’m a failure. A disgrace to the Hale family name.
と自虐するアレキサンダーの姿は哀愁が漂いすぎて、気の毒になってくるほど…。
とはいえ、このスパイ・スクールシリーズは、優秀なスパイが大活躍して終わりという物語ではない。サイラスやエリカほどの才能に恵まれていなくても、スパイ学校の生徒にも、そしてアレキサンダーにも、得意分野はある。みんなで力を合わせて、敵陣に乗り込むシーンが本作のハイライト。
スパイとしての自覚が芽生えるベン
スパイ養成学校で半年を過ごしたベンは、少しずつスパイとしての自覚をもつようになっていく。(もちろん、そこには、憧れのエリカに認められたいという下心も大いにあるけれど。)
どうしたらよいか分からなくても、逃げたくても、最後まで踏みとどまってミッションを果たそうとするベン。
Even though I didn’t know how to do this, I still had to try. If I ran, I’d probably survive – but I wouldn’t be able to live with myself.
「逃げて生き延びたとしても、そんな自分で生きていけない」と、責任を全うしようとするベンの姿は、本物のスパイそのもの。(読者からすると、まだ子供なんだから命を大切にしてくれ、と言いたくなるが…。)
前作では、訳も分からないままスパイ学校に転校させられたベンだけど、本作では、運動能力も推理力も、スパイとしての心構えも大きく成長している。とはいえ、相変わらず戦闘は苦手だし、優秀で美人なエリカに頭が上がらない。スパイ学校シリーズはまだまだ続くので、今後の展開が楽しみ。