主人公ダレン・シャンは、サッカーが得意な普通の少年。
ある日、友だちの1人が奇妙なサーカス「Cirque du Freak」のチラシを持ってくる。「一体どんなサーカスなのか?」仲間たちは、みんな興味津々。なんとかチケットを手に入れたダレンは、親友のスティーブとサーカス会場に向かう。廃墟で行われたそのサーカスには、狼男や毒蜘蛛を操る大男、そしてヘビ少年など、実に奇妙な人物たちが、世にも不思議な芸を見せる。ダレンは、とりわけ毒蜘蛛に魅了されるが、それが彼の運命を大きく変えていくことになる。
人の手首が落っこちたり、ヤギが毒蜘蛛に殺されたりと、PTAからクレームが飛んできそうな残酷で不気味なシーンが盛りだくさん。でも、その残酷で不気味なところが、この本の魅力。「清く正しく美しく」なんて、つまらない。
親友スティーブ
ダレンの親友スティーブ。彼には父親はおらず、母親との関係もうまくいっていない。
そんな家庭環境のせいなのか、スティーブには気難しいところがあって、怒ると手がつけられない。学校でも怖がられる存在だけど、ダレンはそんなスティーブの良き理解者であり、一緒になって「悪いこと」を楽しんでしまう悪友でもある。
夜中にこっそり奇妙なサーカスに行く、なんて恐ろしいことも、2人一緒なら怖くない。
“Are you scared?” I asked Steve.
“No”, he said, but I could hear his teeth chattering and knew he was lying. “Are you?” he asked.
“Course not,” I said. We looked at each other and grinned. We knew we were both terrified, but at least we were together.
小さい頃からの付き合いとはいえ、ダレンとスティーブとの友情は必ずしも盤石なものではない。奇妙なサーカスでの出来事は、2人の間に小さな秘密、小さな嘘を作り出す。そして2人の仲には小さな亀裂が。最初は修復可能に思えたこの亀裂が大きな誤解へとつながり、いつしか2人の仲を決定的なものにしてしまう。
ダレンとスティーブとの関係がこれからどうなっていくのか?
これは、今後の見どころの1つになりそう。
家族との別れと新しい人生
本シリーズのタイトルは「The Saga of Darren Shan(ダレン・シャンの冒険譚)」。
1巻目『Cirque du Freak』は、その冒険が始まるところまでを書いているのだけれど、冒険が始まる時には必ず「別れ」があるもの。これまで一緒にいた家族や友だちと別れ、故郷を離れなければならない。この家族との別れのシーンは、涙なしには読めない。
そして生まれ変わったダレンは、新しい人生を踏み出す。
その人生は、明るく輝かしいものではなく、暗く孤独なものになることを予感しながら…。
“Can we never make friends?” I asked. “Can we never have homes or wives or families?”
“No,” he sighed. “Never.”
“Does it get lonely?” I asked.
“Terribly so,” he admitted.